「量の世界と質の世界」(OO百韻) | ◇ ◀ ▲ ▶ |
一口に平均といってもさまざまなものがあるが、 抽象化のレベルを一つ上げて考えてみると その本質は非常にシンプルであり、 また普遍的な構造を持っていることがわかる。
平均というのは一般に次の式で定義される。
これは相加平均とよばれるものだが、 数学の世界ではこれ以外にも、相乗平均、調和平均などと沢山の種類の平均がある。 これらはそれぞれ意味や用途が微妙に違うわけだが、実はその本質は一つの式で表される。
もしくは、ここで、f(x)にどんな式をもってくるかで、どの平均であるかが決まる。 いくつか代表的な平均を挙げてみよう。
実はこの相加平均には他のすべての種類の平均の要となる重要な役割がある。
fを展開すると、最初は一見して複雑な感じだが、log同士の足し算はlog内でのかけ算になるので、最終的には非常にシンプルな式となる。日常生活においては、この形の平均はそうとは気づかないだけで非常によく見かけるものである。 音の強さ、光の強さ、痛み、地震の震度など、 感覚的に「一つ目盛りが上がった」と思う場合は その強さを計測すると実際には数十倍であったり桁が上がっていたりする。
調和平均は割合とか比率などをものさしにするような場合の平均を表している。 例えば、4km先にある倉庫まで歩いていって荷物をとってくるとしよう。 行きは時速4kmで歩いていき、帰りは荷物を担いだために時速1kmで あったとする。この場合、往復の平均速度は調和平均で計算するのが正しい。
この式ははしょって乱暴な言い方をすれば 「平均からの差の平均」ということになるだろうか。 平均のを基点に考えれば、その値は誤差のことであり、 つまり標準偏差のことである。
ところでfはいったい何をしているのだろうか?
実はfは「質の世界のものを、量の世界に対応させる」役割をもっているのである。質の世界にあるものは、そのままでは平均という演算を施す事ができない。 そこでfによって量の世界に場所を移し、そこで平均を計算し、今度はfの逆演算によって量の世界から質の世界へ逆対応させているのである。
ちょっと話が飛躍するかもしれないが、自然科学とは全般に、 実際に計測された数値に、その意味を説明づける学問であるとも言える。 そういう意味ではその本質は量の世界と質の世界のできごとを 橋渡しする対応付けの部分にあるともいえるのではないだろうか。
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